2017年 1月号 本居 麗子(アトリエ・ゆう スタッフ)
酉年の2017年アトリエ・ゆうとゆうの樹を今年もよろしくお願いします。
今こそ平和を願い 宮澤賢治が農民芸術概論の序論に書いている「世界がぜんたい
幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない!!」
この言葉を噛みしめる時ではないでしょうか。
1月も終わりになって新年のことをいうのも何ですが、今年も穏やかな気候の年明けでし
たね。皆さん、どんなお正月を過ごされましたか。私は毎年近くの神社とお寺に参ったあと、
初日の出を拝むのが恒例になりました。何歳になってもあの初日の出を拝むと不思議に
心新たになるものです。遠くに犬の散歩をしている人の姿はありましたが、他に出会う人も
なく静かでした。
初日の出を拝みながら、この一つの太陽を地球のあちこちでも待っている人があると思
い、被災された方が「日常の生活に戻りたい・・・」と言われる言葉と、地球儀が頭に浮かび
冒頭の賢治の言葉を思いました。
アトリエ・ゆうを立ち上げたのが1988年1月ですから、今年は30年目のスタートを
することになります。その時「学校に行きたくない」という子どもが3人いて、大宮に居場所を
つくり、東京シューレの奥地圭子さんの「専門家が子どもを駄目にすることもある。子どもに
教わりながら始めたら・・・」との言葉に励まされながら、また登校拒否全国ネットワークや
フリースクール全国ネットと繋がり、試行錯誤を繰り返しての30年でした。
その間を簡単に云う事はできませんが、子ども達は身体を張って「学校に行かない」とい
う選択をして、自分らしい生き方を見つけることをしながら、学校だけが学びの場ではない
ことを証明しています。また常識に囚われている私達に大きな気付きをもたらしてくれまし
た。「義務教育」は子どもが学校に行く義務があるのではなく、大人が子どもを学校に行か
せる義務を負うのであって子どもには学習権があるのだ、ということも知りました。
その子どもたちや保護者の力は勿論、多くの支援の方々の力が結集して国を動かすこと
になりました。
昨年〈2016年〉12月、不登校の子どもの学びを国や自治体が支援する「教育機会
確保法が成立」しました。その中には子どもの権利条約に則り、休む必要性や学校外の学びの
重要性などが法律で位置づけられたことになり、子ども達や保護者にとってしばりがゆるく
なると思われます。
また、不登校新聞からの情報です。7月末には文科省「不登校に関する調査研究協力会議」
の最終報告書に、「登校するという結果のみを目標にするのではなく、社会的な自立を目指
した支援」などの文言が盛り込まれた。9月にはその報告書に基づき、国は画期的な通知を
全国に出している。その通知には
* 不登校を問題行動と判断してはならない。
* 不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味をもつことがある
* 不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭する。
などの内容が示された。国の動きに先立ち、東京都なども大きく方針を変え、フリースクール
やホームエデュケーションの実践が報告され、子どもが追い詰められる学校の対応や親の会
の大切さなども指摘された。
年間不登校の児童生徒が12万人を下らない現実の中から、今大きく歴史が変わっていること
を感じます。
現在、アトリエ・ゆうに来ている子どもたちは大きくなり、学校との関係は薄くなりまし
たが、時々問い合わせはあります。今は働くということに関心が移ってきています。働き
ながらもその帰りに寄る場所になったり、自由なたまり場的な感じで過ごしています。
しっかりした人間関係も出来てきて、この居場所があることが大きな安心に繋がっている
ように思えます。またゆうの樹との連携も大きいことです。
しかし、いつも事務所の維持継続に危機感を持ちながら続けているのが現状です。
今年30年を記念して「アトリエ・ゆう30年記念の集い」を11月にしようと話し合って
います。今まで関わって下さった方や関心のある方と一堂に会して皆さんからアイディアを
頂いて、新しい出発が出来れば、と考えています。
ゆうの樹は精神障害の方の就労支援として「コーヒーの製造販売」「カフェ、喫茶店」
「古書ネット販売」などを行う福祉施設として、アトリ・ゆうの事務所の近くにあります。
沢山の方々にコーヒーを購入してもらったり、古書の提供をして下さったり、喫茶店にご来場
いただいたりしながら、お陰さまで運営しています。有難いことです。
細々ながら、多くの方のご協力で30年続けて来られたことに感謝しつつ、これからもほっと
できる居場所として続けたいと思います。よろしくお願いします。
「30年記念の集い」については、後日ご連絡させていただきます。
本居 麗子
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